Research


1 細胞増殖因子について
2 EGFファミリーの増殖因子と膜結合型増殖因子
3 HB-EGFについて
4 発生過程や成体におけるHB-EGFの役割
5 膜型から分泌型への転換の重要性
6 膜型から分泌型への転換機構
7 HB-EGFとがん
8 膜型HB-EGFと複合体を形成する分子群の解析
9 CD9およびテトラスパニンファミリー分子の解析
10 線虫を用いたテトラスパニンの遺伝学的解析
11 ジフテリア毒素とジフテリア毒素レセプター
12 HB-EGFを分子標的とした抗癌剤の開発GrowthFactor.htmlEGFfamily.htmlEGFfamily.htmlHB-EGF.htmlHB-EGFinvivo.htmlHB-EGFinvivo.htmlSheddinginvivo.htmlSheddinginvivo.htmlEctodomainShedding.htmlEctodomainShedding.htmlHB-EGFandCancer.htmlHB-EGFcomplex.htmlHB-EGFcomplex.htmlTetraspanins.htmlTetraspanins.htmlC.elegansTSP-15.htmlC.elegansTSP-15.htmlCRM197.htmlCRM197.htmlshapeimage_3_link_0shapeimage_3_link_1shapeimage_3_link_2shapeimage_3_link_3shapeimage_3_link_4shapeimage_3_link_5shapeimage_3_link_6shapeimage_3_link_7shapeimage_3_link_8shapeimage_3_link_9shapeimage_3_link_10shapeimage_3_link_11shapeimage_3_link_12shapeimage_3_link_13shapeimage_3_link_14shapeimage_3_link_15shapeimage_3_link_16shapeimage_3_link_17shapeimage_3_link_18shapeimage_3_link_19shapeimage_3_link_20
  1. 箇条書き項目 11. ジフテリア毒素とジフテリア毒素リセプターについて


 ジフテリア毒素はジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)が合成し、菌体外へ分泌するタンパク質毒素です(図11)。分子量約 58kDaの単純タンパク質で、トリプシン処理によってジスルフィド結合で架橋された2つのフラグメント、フラグメント A (約 21kDa)とフラグメント B (約 37 kDa)に分かれます。細胞に結合した際には、細胞膜上でフューリンというプロテアーゼによって切断されます。

 

 フラグメント B は R ドメイン(レセプター結合ドメイン)と T ドメイン(膜貫通ドメイン)からできていて、 R ドメインにはレセプター結合能が、 T ドメインには脂質二重膜に細孔を形成しフラグメント A の膜通過を促す働きがあります。フラグメント A には、ペプチド伸長因子(EF2)を ADP リボシル化する酵素活性があり、これがこの毒素の毒性の本体です。


 EF2 は細胞質内でタンパク質合成に必要な因子で、ADP リボシル化された EF2 は活性を失い、結果的に細胞の蛋白合成が停止します。ジフテリア毒素のように毒素活性部位とレセプター結合部位からなる毒素を一般に A−B 型毒素と呼び、分泌型の細菌毒素に多く見られます。


<図11 HB-EGF (DTR) に結合したジフテリア毒素 (DT)>


 図12 にジフテリア毒素の細胞内侵入機構を示しています。ジフテリア毒素は、まず細胞表面のジフテリア毒素リセプターに結合します。リセプターに結合した毒素は、エンドサイトーシスと呼ばれる細胞の働きで、細胞内の小胞(エンドソーム)に取り込まれます。エンドソームの内部は酸性になっていて、毒素分子に構造変化が起こり、これまで分子内部に折りたたまれていた T ドメインが分子表面に出てきて、フラグメント A のエンドソームから細胞質への膜通過を促進します。最終的には、細胞質に到達したフラグメント A が EF2 を ADP-リボシル化して、タンパク合成を抑制します。








<図12 ジフテリア毒素の細胞内侵入機構>


ジフテリア毒素レセプター

 細胞のジフテリア毒素感受性を決定している第一の要因は、ジフテリア毒素のレセプターへの結合です。ヒトやサル由来の細胞はジフテリア毒素に対する感受性が高く、サル由来 Vero 細胞を用いてレセプターの同定が試みられてきました。ジフテリア毒素レセプターの遺伝子は、ジフテリア毒素の感受性を指標にした発現クローニングによってクローニングされ、その結果 proHB-EGF がリセプターとなっていることが明らかになりました。


 HB-EGF はマウスやラット由来の細胞にも発現していますが、これらの細胞ではジフテリア毒素に対する感受性がヒトやサル由来の細胞に比べ大変低い。これはジフテリア毒素がマウスやラットの HB-EGF には結合しないためです。ジフテリア毒素は proHB-EGF の EGF 様ドメインに結合することが解っていますが、マウスやラットではこの部分のアミノ酸配列の一部が異なっているため、ジフテリア毒素が結合できないのです。


 ジフテリア毒素の細胞への結合には CD9 とヘパラン硫酸プロテオグリカンも関係しています。私達は、ジフテリア毒素リセプターにアソシエートしている分子として DRAP27(Diphtheria Toxin Receptor-Associated Protein)を見いだしましたが、クローニングの結果 CD9 と同じものであることが分かりました。DRAP27 / CD9 は、それ自体はジフテリア毒素結合能を持ちませんが、ジフテリア毒素リセプター (proHB-EGF) の毒素結合能を上昇させる働きがあります。ヘパラン硫酸プロテオグリカンもジフテリア毒素リセプターのヘパリン結合ドメインに結合して、毒素結合能を上昇させます。(EM)


(関連文献)

Kageyama, T., Ohishi, M., Miyamoto, S., Iwamoto, R. and Mekada, E. (2007).

Diphtheria toxin mutant CRM197 possesses weak EF2-ADP-ribosyl activity that potentiates its anti-tumorigenic activity.

J. Biochem. 142, 95-104.


Hasuwa, H., Shishido, Y., Yamazaki, A., Kobayashi, T., Yu, X., and Mekada, E. (2001).

CD9 amino acids critical for upregulation of diphtheria toxin binding.

Biochem. Biophys. Res. Commun. 289, 782-790.


Nakamura, K., Mitamura, T., Takahashi, T., Kobayashi, T., and Mekada, E. (2000).

Importance of the Major Extracellular Domain of CD9 and the EGF-like Domain of HB-EGF for Upregulation of Binding and Activity.

J. Biol. Chem. 275, 18284-18290.

 
〜研究内容の紹介・11〜